《MUMEI》 彼女が何を言ってるのか解らない。 自分のことばかりで自分しか見ていなくて自分だけの理屈、 周りがどうだろうと関係なく考えを押し通す。 ―――――――これが愛…? 「…………違う、」 「え?」 よく聞こえなかったのか首を少し傾げ朋夜に聞き返す。 「頂戴、とかそんなのおかしい。貴女のは愛なんかじゃなくて我が儘の押し売……「あーあ、もういいわ。なんて話がわからない人なのかしら」 冷めた目で、肩に添えてあった手までも冷たい仕草で振り払われる。 「我が儘のない愛なんて存在しない。何かを犠牲にしてでも誰かを利用してでも手に入れたい。それが愛よ」 「…………………………」 彼女の強い気持ち、 そう言われるとそうなのかもしれない。 ―――――――――――けれど、 「間違ってる…」 「―――――え?」 それは確実に断言できた。 「人それぞれ考え方は違うし愛の理屈も違うのは確か。でもあたしと貴女の考えは対極過ぎて全部がズレて聞こえる。自分しか見ていない愛って、愛と言えるの?」 彼女は黙った。反論出来なくてとか絶句してとかの種類ではない、 ただ、黙った ―――――――――――そして、 「残念、交渉決裂ね」 「……………?」 「貴女の日常、私が貰うわ」 「どうゆう意味?」 いきなり口を開けたかと思えば理解し難い言葉に朋夜は怪訝な表情に変わる。 でも空気でわかるのか身体から冷や汗のようなものがうっすらにじみ出た。 「言葉通りの意味よ?人ってね刺激に飢えてるの。そこに少しエサを撒くだけで群がってくるわ。蟻も人間も大差ないこと教えてあげる」 ―――――貴女を使ってね、 とは言っていないが、その言葉を含んだ言い方だった。あたしに何をする気なのか、何を企んでいるのか皆目検討がつかなかった。 だがそれから3日後、 「先、生………?」 「やぁ」 ―――――――足立先生が家に来た。 何で!?どうして!? 疑問に疑問が積み重なって恐怖が思考を支配した 「下駄箱に手紙が入ってて中身見たら代々木の住所が乗ってたんでな」 頭をかく足立を唖然とした顔で見る朋夜。 わかってるだろうけどあたしはそんな手紙下駄箱に入れてないし先生に関わりたくもなかった。 ………………考えられるのはあの時の彼女、 「乗ってたからって………でも何でそれだけで来たんですか!? 「いや、まぁ何かあったのかなって」 「な、何にもありませんから!失礼しますっ」 早く消えてほしくて失礼とかそんなのどうでもよかった朋夜はすぐに玄関のドアを引き戻そうとした。その瞬間、ガッ!と足立はドアの隙間に靴を入れてきた。 朋夜は肩をびくつかせ小さな悲鳴が口から溢れた。 「代々木、お前冷たいよな?前に俺が聞いたときはそんなこと無いって言ってたのにアレは嘘か?」 「…………お、親呼びますよ」 「今いないだろ?車無いし、お母さんはこの時間帯だとパートだし弟は塾だし」 「………………な、んで、何で知ってるの!?」 身体の内側が凍るのがわかった。 確かに今は自分一人、けど… 何故いない理由まで何で知っているんだこの男は…… そして薄ら笑いを見せる足立は朋夜の恐怖に染まった顔に近付き、 † 前へ |
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