《MUMEI》

「おもしれえコーチだ…」



既に椎名は桜井の眼中にはない。


自分に勝つ為に動いた黒田小太郎という男に興味は完全に奪われていた。



さっ…



身構える桜井と井川。



チラッ…



3人の中央に位置する椎名が一瞬関谷を見る。



すっ…



動く井川。


パスカットは十分に狙える位置である。


パスは出せない。


椎名は視線を前へ向ける。


桜井は動かない。


自分とクロ。


2人に付ける位置をキープしていた。


ギリギリまで粘り桜井が自分に寄って来たところでクロへパス。


それが椎名に浮かんだ作戦だった。



キュッ…!!



桜井の足が動く。



(よしッ!!)



ヒュッ…!!



椎名はパスを出す。



ダッ…!!



と、
同時に桜井の足はクロへと向かう。



(反応…はえぇッ!!)



椎名の目にはそう移る。


が、


何も特別なことはない。


この3対2という状況下では椎名の考えた作戦はセオリーそのもの。


桜井もそれくらい理解している。


次にどう動くか?


それが読めるのであればディフェンスの反応も必然的に早くなる。



(所詮その程度か…)



眼中にない…


とはいえ、
あまりにも基本に忠実すぎる椎名のプレーに桜井は落胆する。


が、



キュッ……!!



「んっ…!!」



ダムッ!!ダッ!!















ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「おおおおおッ!!!!!」



「抜いたぁぁぁッ!!!!!」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!













(こ…れは……)



桜井はクロに抜かれる。


そのスピードの前に、


付いて行くことができずに。

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