《MUMEI》

「………」



コート上の彼らに、
鳴り響く大歓声は伝わらなかった。


赤高・聖龍の選手たちは、
クロのプレーに目を奪われたからだ。



「…………い?」



(これが…赤高を育てた人の実力…)



「…ぇ?」



(…マジでやべぇ。)



「ねぇッ!!」



「っ!?」



クロの声に、
選手たちは我に帰る。



「え…あ…?」



「ボール。いい?」



「あ…」



ゴール内に転がるボールを拾い、


奥本がクロへと渡す。



「さんきゅッ!!」



ヒュッ…



クロはボールを回転させ、



「ほッ!!」



人差し指の上へと乗せる。



「…試合、できねぇのが残念っす。」



呟くように桜井がクロに話した。



「…僕もだ。」



クロは笑う。



「ビーッ!!!!!」



会場に鳴り響くブザー。


それはアップ終了を告げる物だった。



「じゃあ…試合で。」



「…えぇ。」

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