《MUMEI》
心重ねて
「……俺は二度と大
切な者をこの手で
殺めたくはない。」


振り絞るようなケ
インの言葉に顔を
上げようとするジ
ェルマ。

それを制するよう
にケインの腕がジ
ェルマの頭を優し
く包み込む。


「なぁ、ジェルマ。
お前は、さっき自分
なんか誰もイラナイ
と言ったな?」

問われて、腕の中で
ジェルマは、こくり
と頷いた。

その顎を掴み上向か
せたケインは、ジェ
ルマの首に掛かるロ
ザリオを手に取る。


「あの夜の事を覚え
てるか?俺に初めて
抱かれたあの日、こ
のロザリオの鎖は俺
が引きちぎった。

あの日、お前は国王
の息子でもなけりゃ
見習い修道士でもね
ぇ、俺のモノになっ
たんだ。

この赤いリボンは何
の証だ?ジェルマ」


「…ケイン、貴方の
証…」


「そうだ、ジェルマ
…イイコだ」

そう言うと、ケイン
はジェルマに軽くキ
スをした。


「んっ…」


「お前がイラナくて
も、俺がイルんだよ
。」

「え」

「俺には、お前が必
要なんだよ。修道院
の地下牢で出逢った
あの日からな…ずっ
とお前に救われてい
た。」


「…嘘だ、そんな修
道師長様に頼まれた
から仕方なく貴方は
…」


言いながら、ジェル
マはケインの方へ顔
を向けた。

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