《MUMEI》
ひととき
   〜江上視点〜


西村くんは

こんなにも私のことを

考えてくれてたんだなぁ・・・。

話を聞いてくれただけじゃなくて

私の心の奥底にあるものまで

分かってくれようとしてる。

私は、西村くんを避けて

傷つけてしまったのに・・・。

どこまで優しいんだろうこの人は・・・

そんなことを考えていると

涙が止まらなくなっていた。

私は、西村くんに

分からないように俯いて

静かに涙を流していた。

すると、西村くんは

謝り、私の心配をしてくれた。

その時、私の胸の奥につっかえていたものが

崩れていった気がした。



あぁ・・・・・。

私は、この人を好きにならないなんて

無理だ・・・。

私の物にしたいなんて

思わないから・・・

好きでいることを

伝えたりしないから・・・

どうか、好きでいることだけは

許して下さい。



私は、天に祈った。

すると、西村くんが

私の顔を覗いてきた。

そして私の顔を見て

西村くんが

「泣いてるの・・・?」っと聞いてきた。

私は、謝ることしか出来なかった。

避けたりして

傷つけてごめんなさい。

そして、それでもあなたのこと

諦められなくて・・・

ごめんなさい。

そんな私を心配してくれて・・・




ありがとう。

私の中には

様々な気持ちが渦巻いていたけど

"好きになったら駄目"

って言い聞かせてる時より

全然辛くなかった。

でも、そんなひとときは

一瞬にして、崩れ去っていった。

もっと深い悲しみを残して・・・

続きなんて



聞かなければよかった・・・

好きだなんて



思わなければよかった・・・

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