《MUMEI》 「蹴散らそうぜ」。「……う……」 目覚めた。 どうやら夢を見ていたみたいだ。 お腹はまだ痛いけど、これからの動きに支障はない。 何だか心地よい気持ちだ。 あれは夢だったのか? わからない。けど、いい感じだ。 僕は、立ち上がった。 「ああ? 立てんのかぁ?」 チャラ金髪が目の前に立っていた。 良かった。どうやら、そんなに気絶していたわけじゃなかったみたいだ。 「か、薫くん! 早く逃げてっ!」 ミクちゃんが叫んだ。横目で見ると、涙で目が腫れているいるようだった。 「いい加減楽になれよ」 チャラ金髪のボディブローが、僕の腹部に炸裂。 だが、左腕を間に入れ、かろうじて防御に成功した。 こいつらが……ミクちゃんを……… 【蹴散らせ】 心の中で声が聞こえた。 声の主はわかっている。 『俺』だ。 僕は抗う事などしない。 僕の身体を『俺』に委ねる。 行こう。僕らは一つだ。 蹴散らそうぜ。 「あ゛ぁ?」 防御された事にそうとう驚いたのか、頬に汗が流れる。 「ブハハッ!」 それを見て、長パーマはお腹を抱えて笑っている。 急に立ち眩みが起こり、立て膝になる。 「…ハッ。何だ、ガキの体じゃ防御し切れねえよな」 チャラ金髪はしゃがみ込み、僕の頭をポンポンと叩く。 だが、その瞬間―――。 「ごがっ!?」 チャラ金髪の顎を拳で強く打ち、脳震盪を起こさせた。チャラ金髪は前のめりに倒れる。 そのすれ違う瞬間に、肘で首もとを更に強く打つ。 チャラ金髪は泡を吹きながら倒れた。 「ハハハハハハ……、は?」 チャラ金髪の様子がおかしいのを気付いたのか、素っ頓狂な声を漏らした。 「……? どうした目黒」 ハゲの男がようやく本を綴じた。 僕の呼吸は荒くなっていたが、それも徐々に治まっていく。 少しずつ。少しずつ。少しずつ。 やがて、呼吸が完全に整った。 「オイ、てめえ目黒に何しやがった!」 スゥ〜っと、深呼吸し、口を開く。 「あ゛あ゛!? 口臭が酷えからその口閉じろよ河童野郎!!」 「…………ハ?」 急に雰囲気と口調が変わったからなのか、ひどく驚いている。 「いいか? 今から俺はおめえらを蹴散らすからな。覚悟しとけよな」 長パーマとハゲの二人に指を差しながら言った。 『俺』に身体を委ねているのに、『僕』の人格はまだ意識がある。 「てめえ……! 小学生のガキ一人に、大人の俺達に何が出来るっていうんだよ」 「アホかおめえ。たった今、一人オトしたばっかじゃねえか」 チャラ金髪の頭をコツンとかかとでぶつけながら言った。 「もう一度言うぜ? おめえらを蹴散らすぜ」 前へ |次へ |
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