《MUMEI》
助っ人。
「そいつはガキと思って油断してただけだ。あのバカはよ」
懐から折りたたみナイフを取り出した。
「武器か……。卑怯だな、おめえ」
「勝ちゃあいいんだよ。てめえはもう謝ったって許さねえ。必ず殺す」
「来いよ。こっちは現役空手道有段者だぜ」
膝を曲げ、低く構える。
「死ね」
長パーマが走り込んでくる。
突き付けるナイフを腕ごといなし、肘で腹部を貫くイメージで打つ。
「ぅぐっ」
長パーマが呻く。
身長差が20cm以上ある。
多分、その身長差が逆に良いんだと思う。
だが、その身長差の分攻撃力も低い。チャラ金髪は油断していた分一撃でオトせたが、こいつはそうはいかない。
小さい体の小回りを活かして決定打を急所にぶち込むしかない。
「薫くん逃げてっ!」
「ッ!?」
ミクちゃんが叫び、俺は素早く長パーマと距離をとった。
だが、後ろから両腕をガシッと強く掴まれた。
「なにっ!?」
ハゲの男が後ろにいた。
抵抗する。ダメだ。大人の握力に俺が勝てるはずがない。
長パーマが腹部をさすりながら近付いてくる。
「これでてめえは終わりだな」
ナイフを俺に向かって振り下ろす。
マズいマズいマズい。これはさすがにマズいって! どうにかなんないの!?
「どうにかなるかっ、アホ!」
暢気に僕に返してる場合じゃないよね!
『僕』と『俺』が思考が交差し、焦りまくっている最中、不意に空気を裂く音。
ほぼ真横に何かが通り過ぎた。
「ぐあっ」
長パーマの振り下ろす腕に命中した。
鉄パイプだ。
あんな物を投げるなんて……。
「ぬあっ!?」
その呻き声と共に、両腕が解放された。
その隙に男達と離れる。
「ああ? お前達は……」
響介、新斗、美鶴がいた。
鉄パイプを投げたのは響介のようだ。
「この……バカヤロウ!!」
俺の顔をグーで殴る。
「いってぇな、おめえ!!」
「何キャラ変えてんだよ! お前、一人で何やってんだよっ!!」
「あ゛ぁ!? そんなの『僕』の野郎に聞きやがれ!!」
「意味わかんねえこと言ってんじゃねえっ!!」
響介と俺は取っ組み合いになる。
「神名、風影。そんなバカな事をしている場合ではないだろう?」
新斗がメガネをクイッと軽く上げながら言った。
「…ちっ。話は後にしてやる。まずは久美を助ける」
落ちている鉄パイプを拾った。
「やっこさん。随分こちらを睨んでいるな。天草、君は下がれ」
「なら新斗くんも下がりなよ。あたしよりもインドア派でしょ?」
「その通りだ。頼むぞ、神名に風影」
さすがにぶっちゃけすぎだ。

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