《MUMEI》

『………っ』

見上げたジェルマは
言葉を失う。

そこにあるのは、自
分を優しく見詰める
ケインの瞳。

その瞳が先程の言葉
は真実だと告げてい
た。


『…そんな…嘘だ…
ケイン…』

急に恥ずかしくなり
顔を伏せたジェルマ
を再び抱き締め、口
を開くケイン。


『俺には弟が1人い
たんだ、俺と違って
争いを嫌う心の優し
い敬虔なクリスチャンだっ
たよ。』

唐突に、ケインの口
から語られる、それ
はケインの過去。ジ
ェルマは黙って聞い
ていた。


『そんなある日、村
は戦士崩れの盗賊に
襲われ、父や母は殺
されて、弟は連れ去
られたんだ。』


『俺は必死に弟の行
方を捜したが見つか
らず…数年が過ぎ、
もう生きてはいない
だろうと諦めかけた
頃、赤い悪魔の噂を
聞いた。』


…え?赤い悪魔?…
それってケインの事
じゃ…

ジェルマは心の中で
呟く。

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