《MUMEI》 「お願い、待って……待って!」 ティアラは大男の腕に、力の限りしがみついた。 「うるせぇ!」 大男に振り払われ、なすすべもなく地面に叩きつけられる。 「っ……」 それでも起き上がって、今度は、黒猫をふんずけている大男の足をどかそうと試みる。 「どけ、邪魔だ!こいつはおれの耳にかじりついてきやがったんだよ!」 見ると、確かに男の耳が赤くなっている。 だが、ティアラにとってそんなことはどうでもよかった。 ちょーっと耳をかじられたくらいで剣を持ち出すなんて、なんて狭量な男なの!! 「い・い・か・ら!!黒ニャンを離してッ」 大男の足を掴む手に力をこめながら、叫ぶ。 「どけってんだよ!」 ついに大男はティアラに向かって拳を振り下ろしてきた。 殴られる。 そう思ってぎゅっと目をつむったが、いつまでたっても衝撃がこない。 「……あら?」 恐る恐る目を開くと、一人の男が大男の拳を掴み、睨み合っているのが見えた。 「……ジーク?」 じゃない。 この人は、誰? 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |