《MUMEI》
かなりマズい状況。
新斗が叫び、俺と響介は同時に振り向いた。
目の前にチャラ金髪が立っていた。
「……な……!?」
「くっ」
響介が左手の持っている鉄パイプを乱暴にチャラ金髪へ振りかぶった。
だが、力があまり入っていなかったのか、片手でつかみ取られた。
「……マズっ!!」
響介はチャラ金髪に首もとを掴まれ、床に叩きつけられた。
「…ぅあっ!!」
もがく響介の首もとにナイフを突き付けられる。
「ハァ…ハァ…。形勢再逆転だな……」
チャラ金髪は何だか苦しそうだ。
充血もしている。
なんだ……、この状況は……。
「ぐあっ」
不意に顔全体に鈍痛が広がる。
長パーマが起き上がったようだ。
俺は机などを巻き込み、倒れる。
「てめえらは…もう許さねえ……!!」
殴られた頬が痛む。
歯は何本か折れたか割れた。
かなり本気の一撃だった。
奴らはもう……本気だ。
瞬きする度に顔全体がヒドく痛む。
だが、俺は泣いてなんかない。
ゆっくりと立ち上がる。
見ると、新斗も殴られていた。
メガネが割れ、結んでいる髪を掴まれ、腹部に拳を叩き込まれ、倒れる。
美鶴とミクちゃんも腕を掴まれ、乱暴に腕をロープで縛られる。
人質が4人に増えた。
「ッ! おい品川! 見ろ」
チャラ金髪の言葉に気付いた長パーマ。
振り向いた途端に、ぶっ殺すと背景に見えるぐらいの威圧感で、それは顔の表情にも現れていた。
体が震える。
本当に殺されてしまうかもしれない。
歯を食いしばり、この状況を打破するイメージをしながら、低く構える。
「蹴散らすっ!」
長パーマに向かって走り出す。
その瞬間に、「おい」と知らない声。
声の方向へ横目で見た。
そこにはチャラ金髪と、ナイフを首もとに突きつけられている響介。
これは、脅し。
構えた拳が止まる。
長パーマにカウンターのように拳を叩き込まれる。
マズい。マズい。マズいマズいマズいマズいマズいマズいマズい。
こんな状況じゃ、為す術がない。
僕は袋叩きに合う。
血反吐を吐き、体をピクリと動けば、別の箇所が痛くなる。
「お前……、俺……達を…どう……す…る……つも…り……な……」
「ああ?」
言っている最中に顔面を踏み、言葉を封じられた。
「…てめえらをどうするつもりか、だって?」
髪を掴まれ、長パーマの目線まで上げられた。
「わからねえか? 逆間久美ってやつ以外は全員、殺す」

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