《MUMEI》

「じゃあ……初めよっか。え〜っと、まずはこの、腕についてる時計の、このボタンを押すの。」

そう言われて、私はさっきまで案内してくれていた男に渡された腕時計の小さなボタンに触れた。

「そうそう!そのボタンをポチっとしたら羽が生えるから!!」


羽?意味がわからなかった。
羽など人間に生えるはずがない、そう思いながら私はボタンを押した。

!?!?

背中が疼くような感覚がして、やがてそれがおさまった。
だが、何かを背中に背負っているような、少し重たい感じがした。

愛夢を見ると、愛夢はおぉ!というような表情をしていた。そしてパチパチと拍手をして、

「わ。いのりちゃんが羽生やすと天使みたいだね!!可愛い!!」

は?羽?

「ぁ、あの、か…鏡とか…持ってない?え〜っと、羽って…」

「あ、鏡だったら私持っていますよ?はい、どうぞ。」

金髪の少しクセのついた、私よりも背の高いおっとりしていそうな女の子が、私に鏡を貸してくれた。

「あ、ありがとうございます!!ぇ…っと……」

「あら、ごめんなさい。私はマリア。…よろしくね。」

マリア……日本人ではないのか……。
思わず、私はそのキラキラとした容姿に見とれてしまった。

じぃーーーー

「…ぇっと、あの、か、鏡見なくていいの?」

「は!忘れてた!って、ぅああああ?!ななななにこれ?!」

羽が、生えていた。

「何って…羽?」

愛夢が言う。

他の四人も、私の悲鳴に驚き一斉に私を見た。

羽が……生えた。

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