《MUMEI》

季節が冬に変わり、制服が冬服へと衣替えになった。
夏服も純白な白が純真な彼女にはすごく似合いだったけど。
黒のブレザーを身にまとう彼女も大人びた身体にはなじんでいた。

彼女の瞳は大きくて、鼻筋も整っている。口の形がキレイで横顔もすごくステキだ。

見た目に似合わず、少し抜けている彼女を、私はすごく、素直に、可愛いと思うのだ。


私はおかしいのかもしれない。

どうして自分にこんな気持ちが産まれたのか。

どうして彼女を好きになったのか・・・。

本当の私はどこにいる?

あの日、バケツの汚い水をかけられて、一人ぼっちの私に。

「水も滴るいい女。」

だなんて、ジョーダンをはいて・・・。
汚い私に、濡れた長い髪がキレイだと。
私に優しく触れてきて・・・。

私は素直に彼女のことが、運命の人だなんて、思ったりして。

彼女が男のひとならば・・・、そんなことなんども考えた。
だって私の心は、身体は、女性のものだと言うのに。

悩んで、元気のないわたしに。
少し抜けている彼女が差し出したりんごは。

世界で一番、甘い味がして・・・。

でも、この気持ちがなんなのか、りんごを食べてもみつからない。

悲しくなって、涙が溢れて。
りんごの甘い味が、次第に辛くなっていく。
どうしても、甘い味を取り戻したくて、顔を何度も何度もぬぐうけれど・・・。

甘い味が戻ってくることはない。

私は彼女のことを・・・。この味のように思っている。

「好きです。」

この4文字が言えるだろうか?
彼女は、受け止めてくれるだろうか・・・?

嫌われる、かもしれない。
離れていく可能性だってある。

それでも・・・。

END



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