《MUMEI》
試験
「答えろよ」
「採用試験だ」
「採用?なんの?」
「……プロジェクト実行委員会」
「実行委員会だと?」
「そうだ。一部の人間しかしらないことだが、毎年プロジェクト開催中に行われている。試験内容は簡単だ。参加者は五人でグループを作り、プロジェクトに参加する。そして指定された標的を探しだして殺す」
男は息をつくこともなく言った。
「……それが僕?」
サトシが小さな声で聞く。
男は僅かに頷く。
「対象者は無作為に選ばれる」
「けど、あれが爆発したら?」
「番号が回収不可になる。私たちもすでに不合格だ」
「じゃあ、警備隊が足枷つけた奴を追っ掛け回してたのは」
「試験の一つだ。あの状況からいかにして標的の爆発を阻止するか」
「……ムカつくな」
ユウゴは低くそう言うと、立ち上がって男の腹を蹴り上げた。
「ぐはっ!」
男の口からよだれが垂れる。
「その実行委員とやらになれば、何かいいことがあるのかよ?ああ?」
もう一度、蹴りを入れながらユウゴは言った。
男はひどく咳込みながら、それでもなんとか答える。
「……し、試験がプロジェクト参加と見なされ、今後は一切参加しなくてもよくなる。次のプロジェクトの競技、ルールを決めることもできるし、仕事に見合った高額な給料をもらうことができる。なにより、プロジェクトの進行をテレビではなく間近で見ることができるんだ。馬鹿な一般人が必死な形相で殺し合う姿をな。こんな最高なことが他にあるか?」
苦しそうに顔を歪めながらも男は笑った。
「……変態」
ユキナは冷たく男を見下ろしている。
「ああ。ド変態だな。みんな生きたくて必死なのに、試験だと?ふざけやがって」
二度、三度、ユウゴは男の腹や顔を蹴り続けた。
「や、やめ……」
涙を浮かべながら男は許しを乞う。
「最後に一つ聞く」
ユウゴは蹴るのをやめて男の頭を掴み、上へ向かせた。
「お前らの隠れ家はどこだ?」
男はよだれと涙で汚い顔を歪めたまま答えない。
ユウゴは手を離し、無言で銃を男の足に向けて撃った。
「ぐああ!!」
男の悲鳴を聞きながら、ユウゴはもう一度聞く。
「どこだ?あるんだろ?セーフハウス」
「……し、市役所の地下」
「そうかい」
ユウゴは冷たく言い放つと、もう片方の足にも弾丸を撃ち込み、靴の裏で思いきり顔面を蹴った。
男は声にならない悲鳴をあげたかと思うとグッタリと気を失った。
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