《MUMEI》
解決。かに見えた。
しばらく沈黙した。
警察だって、何もしない。
その沈黙を破ったのは、ハゲだった。
「…確かに、こんな事は良い方法などではない。そんな事はわかっている…。だが、死んでしまったら……、何も意味が無いじゃないかっ!!」
「ですが、やっていい事とやってはいけない事があります!これは完全に後者です!まだ間に合うかわかりません。でも、やっぱりやり直した方がいいです!罪を認めて下さい!」
ミクちゃんは必死だ。
「もう……、手遅れなんだ……!!」
わずか、若干、ほんの少し、ハゲのナイフがミクちゃんの首もとから離れた。
その一瞬の隙。
部屋に響く一発の銃声。
小鳥遊さんが発砲したものだ。
耳鳴りが止まらない。
目がチカチカする。
嘘……でしょ?
発砲したのか?
ミクちゃんが人質なのに?
この状況で発砲なんて、小鳥遊さんは相当腕に自信があるみたいだ。
だが、普通発砲するか?
ミクちゃんを見る。
「…………!!」
ミクちゃんがガクッと下がっている?
当たった?
ハゲに?
ミクちゃんに?
それとも、両方に?
おかしい。そんなのおかしい。
怒りがこみ上げてくる。
だが、それ以上に………哀しみが広がってくる。
ミクちゃん。ミクちゃん。ミクちゃん。ミクちゃん。ミクちゃん。ミクちゃん。
「おい…。何で発砲なんかしたんだ…」
響介が言った、と思う。
全ての声、音、気配が遠くで響いているように感じる。
「黙れ風影。……良く見ろ」
そんな新斗の声。希望の声。新斗の声がこんなにも大きく聞こえたのは初めてだ。
「小鳥遊さんが撃ち抜いたのは、誘拐犯の腕だ。逆間には、当たっていない」
当たっていない。
僕の頭に木霊のように響いた。
当たっていない。
「逆間はほとんど真正面で発砲されたんだ。気絶してしまうはずだよ」
良かった……。涙が溢れる。
本当に良かった。
「……ぐっ」
腕を撃ち抜かれたハゲ。
いつの間にか拘束されていた。
他の二人もだ。
「終わったな……」
新斗が撤収する警察を見て、呟く。
気絶しているミクちゃんが横に寝かされた。美鶴と響介が駆け寄る。
そうだ…。終わったんだ……。
最も長く、最も痛く、最も酷く、最も考え、最も泣き、最も変わった、夏休みの最終日だった。
もう、こんな夏休みになんて巡り会わないだろう。
僕ら5人の絆だって、より深まったはず。

……でも、僕には予想出来なかった。
こんな結末、有り得ない。

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