《MUMEI》
入院。
目を覚ました。
目の前に広がったのは、白い天井。
体中が痛い。
「あ、気付いた?意外と早かったね」
美鶴だ。
時間を見た。僕が覚えてる限りの時間帯から、3時間経っていた。
「……あれ?みんなは?美鶴ちゃんだけ?」
……、声が出る。まだ痛いし、かすれてるけど。
だが、美鶴は何も言わない。
「美鶴ちゃん……?」
胸が騒ぐ。
嫌な予感というのを、これほど感じられる事なんて、初めてだ。
「……話して……くれないか?」
美鶴は涙を流しながら、頷いた。
美鶴は説明を話した。
全て。


「……本当……なの……?」
「…うん」
泣き声で頷いた。
「響介くんは…?新斗くんは…?………ミクちゃんは………!?」
少し取り乱しながら言った。
それに少し驚いたのか、ビクッと肩を上げる。
「響くんは、新斗くんのお父さんのおかげで、ただの注意で済んだから大丈夫。新斗くんも大してケガはしていないよ」
「わかってるよ……!あの二人は心配ないってのはわかる……!でも、心配しているのは、ミクちゃんの方だっ!!一体どうなったんだっ!!言えっ!!」
「ちょ、カオルン!今はもう夜中なんだから声のトーンを落として。ちゃんと、言うから……」
ため息を吐きながら言った。
……やってしまった。
美鶴は何も悪くないのに……。
「久美ちゃんは……、見た方が早いかもしれないね……」
美鶴は立ち上がった。
「立てる?」
僕は黙って頷いた。
体が痛いけど、松葉杖を貸してもらい、立ち上がった。


かなり歩くのかと思いきや、隣の病室だった。
コンコンとノックし、病室へ入る。
「あ、神名くん。大丈夫だった?」
「…おばさん……」
ミクちゃんのお母さんだ。
いつもは忙しくて、まともに娘と顔を会わすことすら難しいはずなのに。
いや、娘が大変なんだ。当たり前か。少なくとも、この場にいない父親より、はるかにマシだ。
隣の空ベッドには響介と新斗が寝ている。
「僕は大丈夫です……、一応」
「声が嗄れてるわね。大丈夫?」
「はい。だから、大丈夫です……はい」
そんな事より、ミクちゃんが心配なんだ。正直、退いてもらいたい。
「あの…、それで逆間久美さんは…?」
「あのベッドで寝ているわ」
一番奥のベッドに指を差した。
「ありがとう……ございます」
ベッドに近付いた。
ミクちゃんはぐっすりと眠っている。血色は大分良さそうだ。
頭には包帯が巻いてある。
僕はそっと手を握った。

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