《MUMEI》 自販機をじっと見つめている彼女だが、そんなことで飲み物が出てくる仕組みにはなっていない。 オレの方をチラリと見た気がするが、助け舟はまだ出航しませんよ。 「………………」 まだわからないのだろうか。 さっきオレが買っているのを見ていたはずなのに、財布を出す素振りすらないとは……あ、まさか……! 「もしかして財布……っていうかカネが、ないのか?」 するとこっちは見ないままコクリと頷《うなず》いて答える。 「そういうことは早く言えよ。ほら、オゴってやる」 財布から小銭を取り出し、「何でも買うがいい」と彼女に渡した。 「実はここの自販機な、ボタンを連打すると二本出てくることがあるんだよ」 彼女はハッとしたように振り向いた。 「ホント?」 この裏ワザに喰いついてきたので、オレは神妙な表情をつくり、 「ホント」 イソイソと自販機に小銭を入れ、一呼吸おいた彼女が向けてくる眼差しは、オレの合図を待っているようだ。 「グッドラック」と親指を立ててやる。 前へ |次へ |
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