《MUMEI》 早すぎた登校時間。「カァオルゥゥアアアア!!!!」 悪夢から覚めた瞬間も、悪夢だと思った。 「ぐおっ!?」 晴姉さんに朝のかかと落としを腹部に喰らった。 起きたばかりなのに、意識が吹っ飛びかけた。 「おう!覚めたか、我が愚弟よ」 ムカつく。 こんな奴が姉だなんて、不幸だ。 「…冷めたよ、完璧に」 「……なんか『覚めた』のイントネーション違くね?」 あんたに冷めたんだよ、晴姉さん。 頭をかきながら時計を見る。 「…って、ええっ!?9時半!?完全に遅刻だっ!!」 どういうことっ!?と言いながら晴姉さんを見る。 「アタシも今起きたの」 救いようがねえ。 あんたも遅刻かよ。悠長にしてて良いのかよ。 「行って来ますっ!!」 速攻で着替え、学校へ走った。 「ハア…ハア…ハア…、完全に…ハア……ハア、運動不足だ……ハア」 走って5分未満でこれだ。体育祭とかヤバいかもしれない。 誰もいない。こんな時間なんだから当たり前か。 そこへ、自転車が通り過ぎる。 よく見ると―――。 「よお薫。珍しく早いな」 風影響介だ。 一時停止し、手をプラプラ振りながら言った。 「おはよう、響介」 相変わらず、肩にかけている竹刀が似合う男だ。 …って待てよ?今、響介はとても不自然な事を言った気が……。響介は良く遅刻するからいてもおかしくはないが……。 「また久美に呼ばれっかも知れねえけど、どうしよっかなぁ。あの日の事を思い出させないためには、あまり近くにいるのはマズいよなぁ」 それは僕も同感だが……。 「ねえ響介。もう遅刻のはずだよね?何でそんな余裕綽々としてるの?」 もう開き直ったのだろうか。 「は?遅刻?オレは今から朝練しに行くんだけど、遅刻なのか?」 「――――え」 朝練? 「じゃあ……今何時……?」 「そ〜ね、だいたいね〜♪」 イラッ。 歌いながら腕時計を見た。 「6時半だぞ」 僕は唖然した。 目覚まし時計が鳴らなかった? いいや、違う。 時計が鳴りだす前に起きてしまったからか。 何故人がいない? 時間が早すぎるからだ。 こんなに早く学校に行くなど、朝練以外理由が見当たらない。 「……騙された……」 晴姉さんのバカヤロウ。 「時間、間違えたんか。アホだなぁ」 響介に言われてしまうなんて。 「じゃあ薫。一緒に学校行こうぜ。朝練サボっから」 「え、いいの?」 「大丈夫だよ、結局は弱小校なんだ」 そういう問題なのだろうか。 前へ |次へ |
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