《MUMEI》

そう言った彼女の顔はとても晴れがましく見え、印象的……もとい、衝撃的だった。


――からかってやろうとついたオレの嘘《うそ》を、彼女は真に受け信用した。……根は素直だということだろうか。

そしてなにより、自販機を破壊してしまうのではないかと思わせる尋常ならざる力。

アレを見てしまったら、今更「嘘でした」なんて自殺行為に等しい。

よく見ると自販機のボタンが割れて、中にめり込んでいるではないか。

周りに人がいないかどうかさり気なく確認し、慌てて制服の袖で指紋を拭き取った。


「ねぇ、ここからだと目的の場所まで距離があるから、自転車に乗って行きたいんだけど、後ろに乗ってもらえる? 適当な場所でお弁当も食べたいし」

「え? ああ、そうだな……」

ここから先の展開は嫌な予感しかしない。

引き返すチャンスがあるとすれば、ここが最後のポイントになるだろう。慎重に決めないと――

「早く乗りなさいよ!」

「はい」

自ら退路を断ってしまいました。

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