《MUMEI》
壱枚の扉にもたれて
「どういう撮影なの?」
来た……南先生だ。今日もご機嫌でぴったり俺達の後についていく。


七生も顔色はわずかに悪いけれど、人に質問するときはそんな様子は微塵も感じられなかった。


「良かったあ。すんなり進んだね!お疲れ様」
七生の背中に何気なく触れてしまう。

……違和感。

七生が後退る。


「何か奢ろうか?」
南先生が声を掛けて来た。
眼鏡の奥の笑顔がかりそめのようでならない。


「俺は……」


「有難うございます」

七生の言葉を遮ってしまう。逃げられないようにしっかり指を掴んでおいた。


七生の目が失望の色に変わった。
仕方なかったんだ。ただの幼なじみの色恋沙汰に首を突っ込むなんて虫のいい話だ。

解決出来るのも克服するのも全て七生が一人で乗り越えていくものだから俺が干渉するところではない。

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