《MUMEI》
傷。
「川崎くん、どこにいくの?」

二人で屋上へ向かうはずが、彼は別方向へ進んでいる。
手はしっかりとつかまれ、離してくれない。

「ここ、屋上寒いだろうから。」

そこは男子更衣室。

「で、も・・・。」

そこに誰もいないが男子の更衣室に入るのは気が引けた。

「いいから、いいから!!早く入れよ!」

怒鳴りつけられ、不信感を覚えた。
この人は、私に危害を加えようとしている。

そんな反射的な考えが頭をよぎり、泣きそうになる。

またいじめらる。
そんな不安から、きずいたときには大声を出して叫んでいた。

「助けて!」

すると1分もしないうちに、龍也くんが走ってきた。
ちょうど体育で更衣室を使う予定だったのだろう。彼の手には体育着が握られていた。

「馨子!!」

がらにもなく大声を出して叫ぶ彼に、迷いなく、抱きついた。

「お前何しとんねん!!今度馨子に触ってみぃ、ただじゃおかへんからな!!!」

私に肩を抱きながら、彼の足は屋上へと向かっていた。

屋上に着くなり、再び彼の胸の中へ飛び込んだ。
泣きじゃくり、嗚咽がとまらない。涙と鼻水で制服がぐしゃぐしゃになっても文句ひとつ言わずに私を抱きしめる力を強めた。

「大丈夫や。泣くな、もう悪い奴がお前につかんように俺が守ったるから・・・。」


龍也くんも、泣いていた。

「俺、涙もろい言うたやろ・・・。だから、泣くなや・・・。」

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