《MUMEI》

やはり……間違いではなさそうだ。

オレは石段に座っている彼女を直視する。それに答えるように彼女もオレを見てくる。

慣れたせいなのか、この状況でも恐怖は感じない。

今のオレなら、全《すべ》てを訊《き》くことができるはず!

「さっき言ったよな? 本人だけど、本人じゃないって」

「うん」

「身体は井下《いのした》さん本人のだけど、中身……っていうか魂みたいなモノは別人。そう聞こえるけど……どうだ?」

彼女は若干驚いた顔を見せたが、すぐさま意地の悪そうな表情になり立ち上がる。

腕を組みながらフフフと笑うその姿は、傲岸《ごうがん》という言葉がよく似合う。

「なるほど。学校で会った時とは違うってワケね。なかなかに鋭い……っていうか正解だね」

嫌な予感的中! ここから先はどうなるかわかったモンじゃないぞ!

一歩後退し、身構える。

「あ〜、構える必要はないない。ワタシは敵じゃないし……まぁ、仮に敵だとすればアンタを生かしておく理由はどこにもないんだけど……。わかるでしょ?」

敵じゃないから危害は加えてないって言いたいワケか。

「最初に言ったとおり、ワタシの目的はアンタの力を借りたいだけ」

……どうやら敵意はないらしいが、コイツの目的がハッキリしない上に正体不明ときた。

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