《MUMEI》

「半分正解ってとこね。ワタシから見ればこっちが裏になる」

「そうか。で、こっちの世界ではありえないコトでも、そっちの世界じゃなんでもないコトだったりするんだろ? それが理解できたから笑ったんだよ」

「へぇ」と驚くような素振りで、

「意外ね。怖気付いて逃げ出すか、否定して信じようとしない。お決まりのパターンかな? って思ってたのに」

オレはクスッと笑い、

「否定しようにも、こう現実離れし過ぎてたらできないな」

「あら、事故のこと言ってるの? 奇跡的ってやつかもしれないよ?」

彼女は小首を傾《かし》げ、肩を竦《すく》めてみせる。

「車に撥《は》ねられて重体だぜ? 普通なら今頃ICUの中だ」

「いたって冷静……か。話が進めやすくて助かるわ。ところで――」

何かを要求する手つきで、

「小銭持ってるでしょ? 一枚貸して」

言われるまま財布から十円玉を取り出し渡す。

彼女は指で硬貨を器用に回し、最後に親指で上に弾くとそれを片手でキャッチ。そして指に挟んだ十円玉をオレに見せ、

「この十円玉が今の世界だと思って」

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