《MUMEI》

「もちろん」

オレは安堵《あんど》のため息をつく。

ヴェイグ℃x配の片棒を担がされるのはごめんだからな。

「でも、大丈夫なのか? もう相当な数のヴェイガー≠ェ来てるんじゃ……」

「心配ない。誰でも表と裏を行き来できるワケじゃないの。特殊な空間の歪みと――」

彼女は胸元から小さい石の付いたネックレスをオレに見せて、

「これはヴェイグ≠ナ一つしかない『秘石』。これがないと往来は不可能なの。ちょっとは安心した?」

「ああ。なら時間的に余裕が持てるな」

急にこの世界がどうこうなるんじゃないかと内心焦っていたが、まだ時間には余裕がありそうだ。

……にも拘《かかわ》らず、彼女の表情から、まだ何かありそうな感じがする。


「水を差すようで悪いけど、そうも言ってられなくなったの……」

「何か、問題でも……?」

「今まではこの『秘石』を守るだけで事は済んでたけど……」

そこまで話すと彼女は言い淀《よど》んだ。

なんだ? 何が起こってんだ? 見当もつかないぞ!?

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