《MUMEI》

「キャル! 言ってくれ!」

焦燥《しょうそう》に駆られて強い口調になるが止まらない。

「そのためにここまで来たんだろ? オレの力を借りに……。だったら全部話してくれよ! じゃねぇと協力できねぇだろっ!?」

彼女は少し悩んでいたようだが、何かを決意した表情を見せ、

「この『秘石』を使い、空間の歪みを利用することなく、往来できる術《すべ》を『奴等』は得たの。それに表と裏は同じ時間軸だし、もう時間がないのよ」

「なんだよ……それ」

彼女は再び十円玉をオレに見せ、それに人指し指を当てる。

「コイツに穴を開けようとしているの」


「――っ!!」


言葉の意味が理解でき、愕然《がくぜん》としてしまう。時間に余裕があると思い込み、安心していたため、余計に。

視線が定まらない。何も考えられない、考えたくない。

まさか……まさか、自分達の住むこの世界が、こんなにも、簡単に……壊れてしまう可能性を秘めていたなんて。

家族や友人の姿が頭をよぎり、漠然《ばくぜん》とした不安や恐怖に押し潰されそうになる。

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