《MUMEI》

「結構いい奴だな……オマエ」

素直にそう思ったことを口にすると、彼女は長い睫毛《まつげ》を瞬《しばた》かせ、パッチリとした二重の目でオレを見るや、すぐに視線を逸《そ》らし――

「アンタに会うには身体を借りるしかなかった。それだけよ」

「照れんなよ」

僅《わず》かに頬を赤らめた彼女はそれ以上何も言わず、自嘲《じちょう》するように口元に笑みを浮かべていた。


「キャル。『融合』することになるんだろうけどさ、それをやっちゃうと、その……オレの存在が無くなるんだよな……?」

オレの不安な気持ちから出た言葉に、彼女は意味ありげな顔で、

「基本的な『融合』ってことになると、肉体を持つアンタがベースになって、魂はワタシとアンタの混合状態になるし、元に戻ることはできないわね」

「ん? 基本的っていうことは、例外もあるのか?」

「例外っていうか、ワタシの『力』を使えば『融合』しなくても、それと同じ状態にもっていけるはずよ。元に戻れないとワタシも困るしね」

「『はず』ってなんだよ」

「『はず』は『はず』よ。ワタシだってやったことないんだから、わかるワケないでしょ」

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