《MUMEI》

確かにそれはそうだが、最悪――キャルとの魂混合状態も覚悟せねばなるまい。

「じゃあ、これからどうするんだ? 井下《いのした》さんが完治するまで待つのか? 時間に余裕がある話には聞こえなかったぞ?」

「このままヴェイグ≠ノ行く」

「は?」

ワケがわからん。

このまま行くって、向こうは超能力みたいな『力』を使う連中で……オレと『融合』しないとどうにもならないんじゃなかったのか?

それに井下さんまで巻き込むことに……いや、既《すで》に巻き込まれてるか。


「言いたいことがあるのはわかってる。でも、ワタシを信用してもらうしかない」

彼女の眼には、強い意志が宿っているように感じられる。

「今から井下和美《かずみ》が事故に遭《あ》った現場まで行く。『空間の歪み』が生じているその場所で、この『秘石』を使いヴェイグ≠ノ着いたら、アンタにはやってもらうことが沢山ある。
再びこっちの世界に生きて戻れる保障もない。どう? ケータ。ワタシ達の世界に……それでもアンタは来れる?」


怖ろしいことを淡々《たんたん》と言い放つ彼女を前に、オレは俯《うつむ》き、そして考える。

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