《MUMEI》

この辺りは高さのある草木が鬱蒼《うっそう》としていて森になっている。

敵襲を受ければ草や枝などに当たり、音で反応できても姿が確認しづらい分だけ恐怖が増す。

「うるさいわねぇ……、もう少しって言ってるでしょ?」

警戒せずにはいられないが、よく見ると所々に果物のようなモノが生《な》っている。

これは……食べられるのだろうか。

「ケータ。着いたよ」

赤・青・黄色といった皮の色はリンゴを彷彿《ほうふつ》させられる。

腹は減ってないけど……ちょいとつまんでみようかな?

「聞いてる?」

「ああ」

でも『好奇心は猫を殺す』って言葉があるし……。

「アンタって……女性よね?」

「ああ」

ここは我慢のしどころ……か。

「ふん!」

「あぐぁ!!」

あまりの痛さに背中がつりそうなほど仰け反り、バッグを落としてしまう。

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