《MUMEI》

「待たせちゃ悪いわね……。急いで行きましょう」

「それではワタシの肩に触れてください。移動します。……ん?」

彼は倒れているオレに気付き、助け起こそうと肩を貸してくれる。

「大丈夫ですか? ケータさん。動けますか?」

「は、はい……」

その様子を見ていたのか、彼女と目が合う。

「なにそんな所で寝てんのよ。まだそんな時間じゃないでしょ?」

冷ややかな目がオレを抉《えぐ》る。

仮にも『もう一人の自分』だぞ? もっと手加減しろ!

「ひ、昼寝してただけだ……」

悔しいがこんな強がりを言うので精一杯だ。立て続けに同じ箇所を三度も抓《つね》られれば、誰だろうと耐えられるモノではない。

「あっそ。じゃあとっとと行きましょうか」

「……おう」


オレ達は言われたとおり、ロッドさんの肩に手をやる。しかし、これでどうやって移動するというのだろうか。

「ではお二方《ふたかた》。行きますよ」

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