《MUMEI》

「え? なんでですか?」

「拠点の周辺には特殊な結界が施してあって、その中では『力』を使うことができないのよ。ここからは自力で進むしかない」

キャルの答えにロッドさんが頷《うなず》く。

「ロッドのような『力』を持つ敵がいれば、拠点なんてあっという間に壊滅しちゃうからね。用心のためよ」

「そういうことか」

納得し、これから自力で進むことになる道を、改めて見渡す。

この辺りはV字形をなす両岸が険しい崖になっていて、岩が様々な造形を象《かたど》っている。

地下の拠点にはもってこいな場所があるのかもしれないが、瞬間移動が使えない以上、ここを進んでいくのは少しばかり骨が折れそうだ。


――前言撤回。少しどころか大いに骨が折れる。

「大丈夫ですか? ケータさん」

気を遣《つか》って声をかけてくれているようだが、正直返事するのも辛い状態だ。

「『大丈夫じゃない』って言っても、無理やり引っ張っていくけどね」

……オマエは鬼だな。

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