《MUMEI》

さっきの岩押しが無意味なことだったと理解し、そのまま自分の身体を地面に放り出す。

なんて無駄なことしちまったんだ――

「イテッ!」

キャルが脚を蹴っていた。それも結構な力で。

「なんのつもりだよ……!」

抑え込んでいたモノが爆発しそうになる。

「これで分かったでしょ?」

「なにがだよ。スイッチじゃなくてただの岩だったってことがか? すっかり騙されたよ」

彼女の嘆息《たんそく》と共に、オレを見下ろす眼に哀れみの色が滲《にじ》む。

「ワタシの話、最後まで聞いてたの?」

そんな眼でオレを見るんじゃねえと、逃げるように顔を背《そむ》け、質問には答えないでいた。

「……まぁ、疲れてるから聞き漏らした。ってことにしといてあげるわ」

そう言うなり彼女は岩に近づき、拳でコンコンと叩いて見せる。

「ケータ。これは間違いなく、拠点に入るためのスイッチよ」

そんな……、あれだけ押してもダメだったのに。

純粋に力が足りなかったってことか? 確かに学校の体力診断テストじゃ、並以下だったけど……さ。

「オレに力がないからって言いたいんだろ? そこは認めるよ」

「半分正解ね」

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