《MUMEI》 差し伸べてくれた手を取り、引っ張り上げてもらう。 「ケータさん、動けますか?」 そいつは愚問ですよ……ロッドさん。 「『動けない』って言ったら、キャルに引きずられるんで」 「よくわかってんじゃない」 彼女はフフフと笑い、オレもバッグを拾い上げながらつられて苦笑する。 「そうですね。それでは行きましょう」 階段を下り、人一人がやっと通れる狭い通路を進む。 十字路になっている場所で、前を歩いていたロッドさんの足が止まり、こちらに振り返る。 「このまま真っ直ぐ進みます。そこが大広間になっていますので」 オレは無言で頷《うなず》きつつ、これから何が始まるのか、不安と緊張で身体が固くなる。 「心配ないわよ。なにもアンタを捕って食おうなんて、誰も思ってないから」 緊張が伝わったのか、後ろからキャルが茶化すように言う。 彼女なりに気を遣《つか》ってくれたようだ。振り向くことはせず、「あぁ」と一言だけ返す。 「さあ、着きましたよ」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |