《MUMEI》
渾身の一言。
左手で右腕を抑える。
「…やめろ……やめるんだ……」
小声で、自分に言い聞かせるように言っていた。
「…大丈夫?響介」
「……あ、ああ…。おほっ、ようやく出てきたな、お前」
いつの間にか戻っていた。
多分、気を利かせたんだな。
「一体どうしたの?自分を抑えて、一体何を我慢していたの?」
「……お前には…、関係……ねえ。あんまりオレに……関わろうと……すんじゃねえ……。オレは……危ねえ奴なんだ……」
よく見ると、響介はかなり汗だくだ。
関係ない。
そう言われた。
「関係なくなんかないっ!!」
だが、僕は響介の言い分を否定した。
「何も話したくないのなら、それも仕方ないよ。けど、もしかしたら力になれるかもしれないじゃないか。だから、話してくれないか?」
一息。
「響介。力に、なりたいんだ」
自分なりの渾身の一言だ。
僕の熱気に圧されたのか、椅子から立ち上がり、後退りした。
そして、右手で頭を押さえ、髪をグシャグシャにした。
「……何だよ、ちゃんと変わってんじゃねえか……。昔のお前は……そんな事言わなかったよな……」
「今の僕は、傷付く人なんか見たくない。助けたいと思ってるんだ」
「今、か……」
響介は天井を見上げた。
しばらくそのまま見上げ続けた。
そして、響介自身が沈黙を破った。
「…悪い。今は言えねえんだ。オレが一人で解決するのが、一番良いから。本当にマズい時に、言うよ」
響介もまた、哀しげな表情だった。
響介がそう言うなら……なんて、そんな事で納得したくない。
だが、無理矢理聞くのもどうなんだろう………。
「…わかったよ。響介が言いたい時に言ってよ。僕に出来ることなら何だって力になるよ」
「オウ、サンキューなっ!」
響介は儚く笑った。



真剣な話は終わり、くだらない雑談を繰り返していると、いつの間にかクラスには何人も来ていた。
響介と別れ、自分のクラスへ向かっている途中に、ミクちゃんと遭遇した。
先程までミクちゃんの事も話をしていたため、かなりビビった。
「お、おはようミクちゃん」
少し変な顔してたかもしれない。
「おはよう、薫くん」
目を細め、首を傾けて笑った。
挨拶までは良かったのだが……。
会話が全く続かない。
ヤバい、気まずい。
「…じゃ、僕こっちだから。またねミクちゃん」
手を振り、このままクラスへダッシュで帰ってしまおうかと考えていると、ミクちゃんに「待って!」と話しかけられた。

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