《MUMEI》

「何してるんだ木下」
扉に聞き耳を立てていた俺に南が話しかけてくる。


「えーと、コンタクト落とした?」
俺、眼鏡なんだけどね。


「邪魔しないでくれよ。」


「七生との事知ってるのか」

「弟だからね。」
南が扉をガードする。


「その……あいつの背中の事も?」
俺の錯覚かもしれなかった、一か八かカマをかけてみる。


「……姉さんの趣味でね。内館と付き合い始めてから変わったんだ。
昔は手の付けようがない程のヤンキーで……今姉さんから内館を取り上げたら大学辞めるどころか刑務所に入り兼ねない。」
趣味?元ヤン?刑務所って……!嫌な予感がする。


「通してくれ」


「悪いけどあれには犠牲になってもらう他ない。」


「七生のこと何だと思って……!」
南は扉の前で黙りこくって反応しない。

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