《MUMEI》 廊下での遭遇。「……ふぇ?」 思わず頓狂な返事をしてしまった。 まさか呼ばれるとは思わなかったからだ。 何か話があるのだろうか。 …って、まず間違いなく部活での話だろうね。 「あの……今日の放課後、大丈夫?」 やっぱりー。 「うん、全然大丈夫だよ。昨日の教室でいいんだよね?」 ミクちゃんはニコッと笑った。 その通りだったみたい。 「じゃあね、薫くんっ! 詳しい事はメールするねっ!」 ミクちゃんは教室に戻っていった。 さて、じゃあ戻るか。 歩いていると、小柄な女の子にぶつかった。 「きゃっ!」と尻餅をついた女の子は、天草美鶴だった。 「ごめん。大丈夫、美鶴」 「な〜んだ、カオルンだったのか〜」 手を差し伸べ、美鶴を起こした。 「あ、そうだ。ミクちゃんが今日、昨日の教室に来てくれって」 「知ってるよ! 久美ちゃんからメール来たから!」 携帯を見せびらかしながら言った。 ……美鶴は朝から元気だなー…。姿形なんて2年前と全く変わらないし……。 「そうだ、カオルンのメールアドレスちょうだいっ!」 携帯を更に顔面ギリギリまで見せつける。何!? 何でグイグイくるの!? 「ダメ?」 「良いに決まっているじゃないかっ!」 爽やかに言った―――つもりだ。 美鶴と別れ、今度こそクラスへ戻ろうと、歩く。 もう何が何でもクラスに辿り着こうと、小さい決意をした。 「神名」 呼ばれた。 ホンマかいな。こんな事ってあるの? 何で朝にこんなに人に遭遇するの? っていうか誰なんだ?この呼び方は……新斗? ゆっくりと呼ばれた方向を向いた。 「って、緋門か……」 「なんでため息が混じってんねん。おめん家行ったのに居なかったなぁ。そんな早く何してたん?」 3時間も時間を間違えたなんて、口が裂けても言えやしない。 「何でもないさっ!」 爽やかにスルーした。 「なに嘘ついてんねん」 …何故わかるんだ。 キーンコーン…… …ねえ。これってまさか……。 「ヤバいんちゃう!? これ遅刻パターンやんっ!」 「やっぱり―!?」 早く来たのに遅刻!? 本当にダメダメじゃないか!! 「急ごうっ!!」 「おうっ!!」 僕と緋門は全力で廊下を走った。 「神名に緋門っ! 廊下を走るんじゃない!!」 先生が声を荒あげた。 本日の遅刻者。 神名薫 緋門善吉 前へ |次へ |
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