《MUMEI》
かけもち。
放課後
「帰ろー神名っ!」
いつも通り緋門が言った。
「ごめん、用事ある」
「ま・たっ!昨日もそうだったやないかっ!」
緋門は地団駄を踏む。
「用事あるものはあるの。昨日に引き続き、今日も一人で帰ってください」
「い〜や〜や〜!!」
更に地団駄を踏んだ。
もうめんどくさい。この人。
しつこい緋門を追っ払うには、だいぶ時間がかかってしまった。


文化室にたどり着いた。
昨日のように、もう響介達はいるんだろうか。
大した試練ではないが、入るのに勇気が必要だった。
意を決して、ドアノブに手をかけた。
「あ、カオルンだ!」
「おおうっ!?」
肩が極限まで上がり、その拍子に扉が開いた。
「オッ、薫に美鶴じゃん」
文化室には響介がいた。
「あれ?響くん。部活行かないの?」
「久美が呼んでんだろ?それに勝る理由なんてねえよ」
「カッコいいつもりなの……?」
「……別に」
響介はそっぽを向いた。
文化室の中央に置いてある長机に、響介と向かい合うように座った。
美鶴は僕の右に。
「やっぱり昨日の部活の話かな〜」
美鶴が机に肘を付き、言った。
「……まァそれ以外見当たらないよな」
「僕は別に構わないんだけどさ」
「あたしも〜!」
両手を上げ、笑いながら言った。
「お前らはなっ!オレには部活があんだからよっ!」
響介は剣道部だ。しかし、部員は3人しかいない。
「ボクにだって……生徒会があるんだ」
静かに暗く扉を開いたのは、佐久間新斗だ。
初っぱなから暗いが、キッチリと第一ボタンまで付けている。
「どうした新斗。辛気くせえ顔して。ものすげえクサクサするぞ?」
「黙れ風影。今日、会長に部活のかけもちの事を聞いてきた」
「おおっ!どうだったんだ!?」
立ち上がりながら言った。意外と乗り気な響介。
「反対……しなかった」
下を向きながら拳をギリギリと握った。
「お、おお……?イヤなのか…?」
「ボクは生徒会とかけもちなんだぞ!?ボクは肉体労働が苦手なんだっ!!」
…本気の涙目……。気の毒だなぁ。
「まっ。そこら辺はお互い様だなっ!」
響介が新斗の肩に強引に組む。
「放せ風影!君と一緒にしないでくれ」
「…え」
響介を押した新斗。
押された響介が僕に直撃。
ガッシャン、と椅子と共に倒れる。
「ちょっ」
僕は更に美鶴をも倒す。
……あれ?顔が温かいというか、ふにふにするというか……いや、若干固いような……。
僕は美鶴の胸に顔をうずめていた。

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