《MUMEI》 やさしさ僕は恵まれてる。 顔はいたって普通。勉強もできる。運動も・・そこそこ。 僕の近くには、君がいる。 君はお母さんがいない。その命日。 「もう結構たつんだから忘れれば?」 誰かの口から言葉が漏れた。 嗚呼、やめてくれ。 ガラスみたいな、いや、ガラスよりも薄い・・紙のようで、すぐに壊れてしまいそうな心なのに。 「・・・」 君は唇を噛んで、目から涙が出るのを抑えようとした。 だけど、 傷ついて、もろくなった心は その涙を抑えられない。 目じりが熱くなって、今にも流れだしそうになった。 「やめて・・」 教室のドアを開けながら、震える声で、僕にしか聞こえないような声で君は言った。 教室のドアを閉めると。 涙を手で拭いながら、駈け出した。 行くあても無いのに。 階段を駆け上がって、鍵のかかった屋上の前にいる。 『いくら月日が経ったって、忘れられるわけがないよね。』 お母さんがいる、僕が言うのもおかしいけれど。 「そうだよ、一番近くにいてくれて、一番やさしくしてくれて、それなのに・・っ」 『僕は知ってるよ、だって、君がやさしいんんだ、お母さんもやさしくない筈がない。』 気持ちは伝えたい。 涙は、頬を伝って、地面に落ちた。 君は、そのあと・・教室に僕と戻った。 先生は何故かわかったみたいで。 そのことを言った、本人たちはやっぱりわかっていない。 『理不尽だなぁ』 僕には居て、君には居なくて。 ほんの少しの心の隙間。 僕には、その・・ちょっとも埋められなくて。 「君が居てくれれば、それだけでいいよ。」 『うん。ずっと、僕は絶対に離れない。』 ほんの少しを埋められない僕を近くに居させてくれる君に 『ありがとう』 その言葉は、たった5文字。 その言葉を言うと、何故か暖かくなれて。 人の温もりに、似ている気がする。 伝われ、伝われ、 僕の気持ち。 |
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