《MUMEI》 りんごの正体家に帰ってお母さんに「はい」と買い物袋を渡す。 お母さんは袋を覗き込み1つのりんごを目にして 「こんなの頼んでないわよ」と言った。 芹奈は「だってそのりんご、すっごくおいしいんだって!」 と自信たっぷりで言った。 「あら、試食させてもらったの?」 とお母さんは眉をひそめて聞いてきた。 「ううん。だって八百屋のおじさんが言ってたもん!」 と手を腰に当ててえっへんと言った。 「そんなの嘘に決まってるじゃない。売り物をおいしくないて言って売ってる人なんていないわよ」 「それにりんごは今旬じゃないからきっとおいしくないわ」 それを聞いてむっとした芹奈は 「だって八百屋さんがそう言ってたんだよ!」 ともう一度言った。 でもあとから食べたりんごは少しすっぱかった。 誰かがおいしいと言うものがあっても人によってはおいしくないかもしれない。 そんなことを思いながら芹奈はもう一口りんごをかじった。 でもやっぱり、りんごはすっぱかった… 前へ |次へ |
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