《MUMEI》
奈津。
「おっはよ――う!!」
元気よく文化室へ入ってきたのは、ミクちゃんこと、逆間久美だ。
「あれ?みんなどーしたの?」
ミクちゃんが目撃したのは、美鶴にボコボコにされている、僕ら男子3人である。
僕は……被害者のはず。
ミクちゃんが美鶴を止めたのは、それから2分後の事だった。


僕ら男子3人は正座している。
「あなた達っ!少しは反省した!?」
腰に手を当て、ご立腹な美鶴。
「だから僕は被害者なんだって」と僕。
「新斗が押すから、こんな事になったんじゃねえかっ!」と響介。
「元はと言えば風影がなっ!」と新斗。
「うるさ――――――いっ!!!!」と美鶴。
一番うるさいのは絶対に美鶴だ。
「見てらんないな〜、もう」
よいしょ、と机から降りるミクちゃん。
美鶴を止めてくれるのかな?ありがとうミクちゃん!
「さぁて、覚悟ができた人から出て来ようか?」
その表情は意外にもイライラしているようだった。
見てらんないとは、美鶴のやり方に対してだったのか……。


響介はデコピン2発+チョップ1発。
新斗はデコピン2発。
僕はチョップ1発+ビンタ(美鶴)1発。
さんざん殴られたのに、さらにミクちゃんにこんな仕打ち。ヒドいなぁ。
プンスカとしていたところ、急に扉が開かれた。
もう既に5人揃っているはずなのに、一体誰なんだろう。
少し緊張し、扉を見つめていた。
「あの、ごめんくださ〜い」
ツインテールの知らない女の子だ。
他の四人の顔を見ても、皆キョトンとした表情だった。みんなの知り合いじゃない。
「えっ…と、あなたは?」
美鶴が一番最初に言った。
「アタシは三谷奈津《みたに なつ》です。一年生です」
「あたし達も一年だよ。こんなところにどうしたの?」
さっぱりわからない。
「逆間久美さんにお礼とお知らせがありまして……」
僕達が同学年だということを知っても尚敬語ということは、元々そういう喋り方なのかもしれない。
「お礼とお知らせって、何?あなたとどこかで会ったの?」
ミクちゃんは本当にわからないような表情だ。
「あ、まず最初に言わなきゃいけない事があったんだった。アタシの旧名は―――」
彼女は一句ためて言った。
「秋葉原って言います。秋葉原奈津です」
一瞬、静まり返った。
秋葉原…?それってまさか……。
「秋……葉原………?」
これはマズいっ!!
思わず僕は立ち上がり、彼女の腕を掴む。
「ちょっと来てくれない?新斗も一緒にお願い」
「…ああ、わかった」
「え?ちょ、何ですか!?」
僕は彼女の手を引き、廊下へ出た。

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