《MUMEI》
飛び出し事故
「何て言ったらいいんですかね…。何処か、遠くを見ていたっていうか…。
空…?空間…かな?
とにかく、僕らを見てなかったんです。」


刑事だけではない。
現場に居合わせなかった司と洋平もまた、井上が何を言っているのか、サッパリ理解出来ていない様子だ。

口を開けたまま、井上の顔をジッと見ている。


「そのまま大通りに出てしまって…」


けれど、井上はそんな事お構いなしで話を進めていく。


「僕ら慌てて止めに行ったんです!歩行者信号赤だったから…。でも間に合わなくて…。右からきたトラックにバーンって…。」


「跳ねられたと?」


「はい。」



事件の内容を一通り話し終た井上は、一呼吸して座り直す。


明らかに理解不足であろう刑事のペンは、何をどう書いたら良いか分からず、動きが止まっていた。

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