《MUMEI》
許せないから…
「…行くぞ」
小さく息を吐くと、ユウゴは二人を振り返った。
「どこへ?」
サトシは気絶した男を見つめたまま聞いた。
「決まってる。市役所だ」
「地下室に?行ってどうするつもりなの?……まさか、皆殺し?」
「相手が何人かわからないし、武器も限られてる俺たちが行っても、返り討ちに合うのは目に見えてる」

 コンビニから出た三人は、通りの端を歩き始めた。
「じゃあ、どうするわけ?」
ユキナの問いに答えず、ユウゴはサトシを振り返った。
彼は無言で俯いたままだ。

「サトシはどうだ?」
意見を聞かれ、サトシはゆっくり顔を上げる。
「おまえの友達を、試験なんてくだらない理由で殺した相手をどう思う?」
「……許せない」
絞り出すような声で、サトシは言った。
「だよな。おまえは?」
ユウゴは頷き、今度はユキナの顔を見る。
「そりゃ、許せないよ」
「だろ?俺もだ。だから……」
「だから?」
ユキナとサトシの視線を受け止め、ユウゴはニヤッと笑った。


 三人が向かったのは、大型モニターが設置されているあの駅前だった。
昨日来た時よりもさらに荒れ果てた繁華街では、まだ至る所で煙が上がっている。
人影は見えないが、どこかに息を潜めているに違いない。

 ユウゴたちは途中立ち寄った店や交番に残された拡声器を手に、サトシのお気に入りの場所へと昇った。
あのモニターを見ることのできる、よくわからないスペースだ。

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