《MUMEI》
失恋
「す、好きです。鎌司君。」
はっ、言っちゃったよ。私。

「・・・・―無理。」

それが、あの人の答え。
それだけ言ってあの人は帰って行った。
そ、そうだよね。始めから無理だってことぐらい分かってたのに。
馬鹿だよね、私。
当然の返答なのに、何で、何でこんなにも苦しいの?
頭がふらふらする。熱でもあるのかな?
―目がじわっといたいよ。
お、おかしいな。今朝は何ともなかったはず。
何か、何かが私の目から流れてくる。
そして、さっきまで口から出ようとしていた心臓が、
こんどは誰かに強く握りつぶされているみたい。
私は力なくその場に座り込んだ。
自分の意志とは関係なく、涙があふれてくる。
頭の中では、さっきのあの人の言った言葉が駆け巡っていた。
「―無理。」

私の初恋は、短く、はかないものだった。
多分、これが最初で最後の恋だろう。
もう、私は恋をする事が出来ない。
恋とは華やかなものであり、そして、
それと同時に最も苦しく痛いものである事を知ってしまったから。
恋ってなに?
成功した人だけが感じる事の出来る幸せ?
失敗した人はこんなにも辛い思いをしなきゃいけないの?
あんな振られ方したのに、憎くてたまらないはずなのに、
どうしてまだあの人の事を考えてしまうの?
どうしよう・・・あの人なんて、嫌い。だけど、
好きで、好きでたまらない。
あの人の後ろ姿を見るだけで息ができないよ。
こんなあいまいな私なんて嫌い。
私の感情が消えて、こんな思いなんて忘れちゃえばいいのに。
つらくて、辛くて死にそうだよ。
ねぇ、鎌司くん。
あなたなんかと出会わなければよかった。
どうして、同じクラスになったの?
神様、どうして?

おねがい、助けて。

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