《MUMEI》

抱きしめられている時すごく甘い匂いがした。

「悠斗、まだお母さんケーキ屋してるの?」

「あぁ。長いことフランスで修行してまた同じ場所にマーシェを建てるんだって。」

「そっか。」

「私ケーキ食べたい。」

「いいよ(笑)」

それから悠斗の家に行った。おばさんのケーキを食べた。今おばさんはお店を出す準備で忙しいらしい。

何年振りだろ・・・。

「ハハハ(笑)」悠斗が笑った。

「何?」

「まだその癖、治らないんだ。」

「癖?」

「いちごを切る癖だよ。」

「だってどこ食べてもいちごの味した方がいいでしょ。」

「そーだな。」

見た目は変わってしまったけれど、笑った時のえくぼは変わってなかったね。何か嬉しかったよ。

「そうだ、悠斗。理香ちゃんを家まで送ってあげなさいよ。」おばさんが言った。

「分かったよ。」面倒くさそうに頭をかく所がすごく可愛かった。

「何かごめんね。わざわざさ・・・。」

「リィを襲う物好きなんてこの世界中探したっていないと思うけどな(笑)。」

「何よその言い方ーー」

「嘘だよ。怒んなって。」

「悠斗のバカー。」

「真面目な話していい?」急に悠斗の顔つきが変わった。

「う、うん。」

「リィ、ごめんな。」

「は?何何ーーー」

「おばさんが亡くなってから俺がリィを守るっていったのに引っ越してしまって・・・。」

「そんなことーー(笑)私は悠斗がいなくなって強くなれたからいいの。悠斗に依存してた自分の弱さに気づけたし・・・。」

「でもさ・・・」

「あんたが思ってるほど私は弱くないから。もう大丈夫。そりゃ今でもお母さんに会いたいよ。辛いし泣き叫びたいけど大事な人が出来たから

その人たちを悲しませたくないの。」

「何かリィらしいな。」

「え?」

「うん。」

それから私は家に帰った。

夢みたいででも現実で

嬉しいはずなのに素直に喜べなくて

またいなくなってしまいそうで。

―翌日―

相川君が家の前にいた。

「理香ちゃーん、おはよー」

「おはよー。」

「家ここだったよね?一緒に行きたいなって思って。」

「うん。」

「そうだ。マッツが言ってたんだけど理香ちゃんとマッツ知り合いだったんだね。」

「うん。」

やっぱり悠斗じゃないとしっくりこない・・・。話しても楽しくない。悠斗・・・。

「先生からのお知らせがある。みんな席につけー」

「5月に校外学習で京都に行くことになった。班行動するのだが男女一緒で5人グループを作ってくれ。」

私は陽奈と相川君と悠斗の親友の和輝と陽奈の彼氏の廉となった。

すごく楽しみだった。ここに悠斗がいればもっと・・・。

悠斗のグループには愛佳がいた。愛佳は美人でモテモテで・・・悠斗が愛佳のこと好きになってしまいそうで怖かった。

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