《MUMEI》
事故
「ねぇ、知ってる?4組の入江美嘉っていう人、鎌司君に告ったんだって〜。」
えっ、なんで、知ってるの?
帰りの靴箱で偶然耳にした話。
「えっ?それってマジ?」
「うん。ホントらしいよ〜、友達が屋上にいたとき偶然聞いたんだって〜。」
「は?それで、答えは?」
「ふふっ、それはもちろんNOだよ、「「無理」」って言われたんだって〜。」
「ははっ、そりゃそうだよね。でも“無理”って言われただけ幸運だろ。」
「そうかもね〜。今まで鎌司君に直接告った人ってみんな鼻で笑われただけだったし、
ラブレター渡した人は目の前で無言で破かれたし。あっ、違うよ〜。あまりにも嫌だったんじゃない?」
「はははっ、そうだね。っていうか、そんな奴が鎌司君に告るなんていい迷惑だろ?」
「うん、確かに。身の程わきまえろって感じ〜?」
そんな、私はただ、ただ気持ちを伝えたかっただけなのに・・・
だけど、あの人たちが言っている事は全部ホントだった。
でも、でもこれは、ひどすぎるよ。
私は、雨の中、傘もささず走って、学校を出た。

やっぱり、私が馬鹿だったの?
鎌司君の迷惑だったんだね。
ごめんね。私なんかが告っちゃって。
私、自分のことしか考えていなかったんだ。
鎌司君があたしの告白聞いて、どう思うかなんて考えもしなかった。
やっぱり、私は、ただの自己中の馬鹿なんだ・・・
ごめんなさい。ごめんなさい―。
私の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

それから覚えているのは、鳴り響く車のクラクションの音と、
激痛、そして、誰かが、「馬鹿!」って私を抱きかかえた感覚。

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