《MUMEI》
想像
相思相愛ってことは私、大翔と付き合うのかなぁ?

大翔を見て想像してみる。

まだ男の子と付き合ったことはないから

何をするかよくわからないけど、

たとえば放課後大翔と一緒に帰ったり?

休みの日は一緒にどこかへ出かけたり?

メールを送ったり送られたり?……ほほぉ。

そんなことを考えながら机のそばにある窓へ目をやって

芹奈は「あ」と呟いた。一学年の教室は二階にあって、

窓の下のグラウンドには、授業を受ける一学年の男子生徒たちがいた。

そしてちょうど芹奈からよく見える場所に、侑が立っていたのだ。


あはは、だるそ〜


ほかの男子たちは喋ったり、どつき合ったりしてるのに

侑はずぼんのポケットに手を入れてつっ立ている。

どこか遠くを見るような目をして。

芹奈は侑の笑った顔を見たことがない。

どんなに、にぎやかなところで見かけても侑はいつもクールな表情で

ひそかに「クール番長」と呼んでいるほどだ。

なんだか冷たそうな人、と芹奈は思ったことがある。

ほんとに実際冷たい人かもしれない。

自分を好きだと言ってくれる人を何人もフッて

でもそれに、心を痛めてるようには見えないから。


あの人笑うことってあるのかな?


いかにも冷静でなにごとにも動揺しないように見えるから

彼の笑顔はうまく想像できない。

でも、もし笑ったら―――どんなふうなんだろう…?

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫