《MUMEI》
メール
芹奈の通う高校は電車通学の生徒が多い。

芹奈もそうだし翼や愛李もそうだ。

放課後、ドアのすぐそばの席でうとうとしていた

芹奈は、はっと目を開けた。


乗りすごし…!


ては、いなかった。

窓の外を流れていく景色は、まだ、降車駅の前のものだった。

よかったぁ、と息をついて座席の背もたれによりかかる。

席がおおむね埋まった程度の車内には、タタン、タタンと電車が

刻む一定の穏やかなリズムが静かに響いている。

何となく車内を見回していた芹奈は、ふと目をみはった。


侑くんだっ!?


芹奈の隣で居眠り中の男性の、

そのまた隣で腕を組んで目を閉じているのだ。

すごい!近い!こんなことってあるんだ!

芹奈は急いで通学鞄から桜色の携帯電話を出した。

メール、みんなにメールしなくちゃ。

ケータイの早打ちは女子高生の必須スキルである。

『侑くんと同じ電車に乗っちゃた!
隣の隣で寝てるよー。寝顔もキレイ……』

と、打っていっきに友達全員に送った…

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