《MUMEI》 最悪なお知らせ。「ちょっと!一体どういうつもりですか!?急に引っ張り出して!」 「こちらにもいろいろ事情があるんだ。逆間の前でその話をしないでくれないか?」 新斗が言った。だが、内心穏やかじゃない。 「その話って、何の話かわかるんですか?アタシの名前を聞いただけで決めつけないで下さい」 なんか、この子言い方キツい。 「僕の記憶じゃ、名字が秋葉原なんて、1人しか知らないよ。2年程前にね」 「……なんだ、あなた達は関係者だったんですか……。思った事があるんですが、逆間さんはどうしたんですか?アタシの旧名を聞いてもわからないみたいですし」 記憶を失っているんだよ………って、言うしかない状況だね。 「……本当ですか?」 「ああ、マジだ」 信じられない気持ちはわかるけど、真実なんだ。 「…では、アタシの医療費は!?逆間さんが出してくれたんじゃないんですか!?」 「ああ、間違ってない。逆間の母親はなかなかの人格者でな。誘拐をした動機を聞くやいなや、同情してお金を出したらしい。今でも父親は納得がいっていないらしいがな」 ベラベラと語る新斗。そこまでは僕は知らなかった。本当に何でも知ってるな……。 「とりあえずそういう事なんだ。礼なら逆間の母親に言うんだな」 新斗も大分キツい言い方している。 「……わかりました。お礼はその方にさせてもらいます。…ですが、ここに来たもう一つの目的なんですが……、もしかしたら2年前に関わった人達、全員が危険かもしれないんです」 いきなりの告白に思考がついていかない。 先に反応したのは新斗だった。 「……なに?それは一体どういう事なんだ?」 「そ、そうだよ。危険って……どういう事なのさ」 聞くと、三谷奈津は俯いた。 「2年前の事件で、兄は主犯として捕まりました。自分が2人を動かしたようなものだ……と。でも……学生時代に仲が良かった目黒さんと品川さんは…、他人のために動くような人達ではないんです」 思い出した。確かにタイプ的にそんな奴らではないと断言できる。 「その2人は……先日刑務所を出たんです。……それも、あなた達の事を逆恨みしたままで」 逆……恨み……? 「……逆恨みとは、『こちらが恨む程憎んでいるのにも関わらず、むしろ相手がこちらを恨み、憎んでいる』という意味か……?」 なぜ意味を言った?僕がそんな事もわからないようなバカだと思われたのかな、響介じゃあるまいし。 …というか、一種の現実逃避? 前へ |次へ |
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