《MUMEI》
根性
リョウはいきなり顔面めがけて拳を振り上げた。
俺は金づちで人を殴った事はあっても拳で人を殴ったことはなかった。だからなんのためらいもなく殴りに来るリョウに戸惑い、モロにくらった。泣きそうなぐらい痛いし、口から血は出るし嫌になったけど負けたくない一心でこらえた。リョウは更に殴ってくる。今思えばリョウはすげぇ喧嘩慣れしてたんだ。めっちゃ殴られてるうちにおとんの言葉を思い出した。
『殴られてもいいから殴れ。相手が振りかぶった時がチャンスだ。』
リョウが振りかぶった時、真っ直ぐ顔面目掛けて手を出した。
俺の拳が先に届いた。のけ反ったところを倒してマウントを取る。畳み掛けるように拳を振り下ろす。骨が当たる音がして心地悪い。血だらけになった顔を見下ろして、俺は黒船を撃沈した。

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