《MUMEI》

ここは商店街の一角。
小さな机の上に、広告の裏に書いたかのような安っぽい字。
その机の向こう側に座る女性はじっと立ち止まった私を見ている。
全身をほぼ黒を基調とした姿はさながら魔女を連想させられる。


「気になるのならこちらに来なさい」
凛とした声が周りの騒音を掻き消し、はっきりと聞こえた。私の近くにも人はいる。しかし誰ひとり彼女の声が聞こえていないようだった。その様子からそれは私だけに呼び掛けたものだ、そう感じた。


私は命令されれば動くロボットなのかも知れない。商店街にまったく溶け込めずにいるその場所に向かった。

机の文字が何度も頭の中で反芻する。


アナタノシアワセウリマス、カイマス

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