《MUMEI》
ときの記憶/夏色
 肌を刺すような暑い日差しがやむことも無く地上に降り注ぐ中、地上に生きる生命は、今日も例年通りの夏を迎えていた。


昨日は久しぶりの雨が降ったために、それを反映した今日は湿度がいつもより高く、じめじめとした暑さが辺り一帯を包み込んでいる。


 時々、そんな暑さを落ち着かせてくれるものがあった。

ゆっくりと流れる雲である。

細切れと空に並ぶ雲は、ときより日差しをさえぎってくれていた。


 その雲の上を数機の戦闘機が駆け抜けていく。

新国連所属日本空軍の機体である。


その優美あふれる姿を朴直そうな少年が歩く足を止め見つめていた。


2035年8月
 今日もここ旧八王子跡には、あの日と同じ平和な日常が静かに、そして確かに訪れていた。


作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫