《MUMEI》

そして机の前に着いた時、声に出して言った。

「あなたの幸せ売ります、買います」

「あなたにはここにそう書いてあるように見えるのね」

「そう書いてあります」

「わかったわ。それじゃあ確認の為に一つ聞きたいことがあるの」

真っすぐ、透き通ったような白い一差し指が私の顔の前に差し出された。

「あなたは今幸せだと感じますか?」

−−これは宗教かなんかの勧誘なのだろうか?一般的にこう聞かれた時、幸せだと答える人はかなりの少数だと思う。人間の幸せへの欲求は底無しだろう。人より幸せに感じることはあっても、もっと幸せになりたい、もっと、もっと………
だからほとんどの人が幸せだと答られない。
きっとこの人はそんな人の感情に付け込んで変な物でも売り付けようとしているんだ。
私は暫く答えられないでいた。

「難しく考えないでいいのよ。実はここに書いてある文字、人によって見え方が違うの」

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫